第5章


そのとき、まるでモサゴンの口に飛びこむように黒いかた まりがホッピーとモサゴンの間にわってはいりました。

それは、タートルじいさんでした。 じいさんのからだにモサゴンのするどい牙がちきささりま した。

じいさんは、手足をバタバタさせて暴れましたがモサゴン の牙からはのがれられませんでした。

しかし、モサゴンもまた深くくいこんだじいさんをはずす にはずせず、首をふりながら猛烈な勢いで泳ぎはじめたので す。


「じいさーーん!」

ホッピーはあとを追おうとしましたが、どこをどう打った のか、からだが思うように動きません。

じいさんをくわえたモサゴンは、みるまに遠ざかっていき ました。

「じいさん!タートルじいさん!」 ホッピーはなみだをこぼさんばかりに大声でさけびました 。






前には友だちが、今はまたタートルじいさんが、モサゴン におそわれそのおかげでホッピーは生きのびることができま した。

モサゴンに対して何もできなかったなさけない自分、タート ルじいさんの教えを守らなかったために、大切なじいさんま で失ったおろかな自分。

ホッピーは、はげしいこうかいの気持ちで大声を上げて泣 きました。そんなホッピーを見て、タートルじいさんのあと を追ってきたパキじいさんは、

「なげくことはない。あれでいいのだ。タートルじいさん は、自分が身代りになり若いお前にあとをたくせたことを喜 こんでいるはずだ。」と、静かにいいました。


何度か陽がのぼり、何度か陽がしずみました。

でも、タートルじいさんはかえってきませんでした。

サンゴの海を見まわるように泳いでいるホッピーの姿は、 さびしそうでしたが、急に大人びても見えました。

サンゴの海は、少しずつ魚やアンモナイトがへりはじめて います。

もうしばらくたてば、またきっともと通りの平和な海にな ることでしょう。






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