それは、タートルじいさんでした。 じいさんのからだにモサゴンのするどい牙がちきささりま した。
じいさんは、手足をバタバタさせて暴れましたがモサゴン の牙からはのがれられませんでした。
しかし、モサゴンもまた深くくいこんだじいさんをはずす にはずせず、首をふりながら猛烈な勢いで泳ぎはじめたので す。
ホッピーはあとを追おうとしましたが、どこをどう打った のか、からだが思うように動きません。
じいさんをくわえたモサゴンは、みるまに遠ざかっていき ました。
「じいさん!タートルじいさん!」 ホッピーはなみだをこぼさんばかりに大声でさけびました 。
モサゴンに対して何もできなかったなさけない自分、タート ルじいさんの教えを守らなかったために、大切なじいさんま で失ったおろかな自分。
ホッピーは、はげしいこうかいの気持ちで大声を上げて泣 きました。そんなホッピーを見て、タートルじいさんのあと を追ってきたパキじいさんは、
「なげくことはない。あれでいいのだ。タートルじいさん は、自分が身代りになり若いお前にあとをたくせたことを喜 こんでいるはずだ。」と、静かにいいました。
でも、タートルじいさんはかえってきませんでした。
サンゴの海を見まわるように泳いでいるホッピーの姿は、 さびしそうでしたが、急に大人びても見えました。
サンゴの海は、少しずつ魚やアンモナイトがへりはじめて います。
もうしばらくたてば、またきっともと通りの平和な海にな ることでしょう。